奇跡

          

奇跡

釣り人には誰でも思い出の一匹といえる魚を釣ったことがあるのではないでしょうか。奇跡という大袈裟なタイトルですが私にとっては奇跡的に釣り上げた思い出深い一匹でした。

 当時私は大学生でした。
 高校生のときから良く遊んでいた友人Mと釣りに行く事になりました。
 釣りに行くといっても私も友人も釣りは出来るが知識などほとんど無い全くの素人でした。

 今でこそカレイは冬から春に釣れるとか、あそこは70メートル沖にかけ上がりがあって
 中潮の満ち上がりに実績が高いなど並の釣り人の知識を持ち合わせている私ですが
 当時は道具も竿も親のお下がりでエサの種類もゴカイぐらいしか知りませんでした。

 季節ごとに釣れる魚も知らなかったので針にエサをつけてただ魚が釣れるのを待つという
 ホントに何も知らない大学生だったんですね。

 まあ釣りは好きだけどお遊びで1年に4〜5回行くといった感じです。
 魚の知識が無いだけにどんな魚が釣れるのか
 というワクワクした気持ちは今の私より何倍もありましたよ。
 陸からの投げ釣りでマグロが釣れると思ってましたから。


 車を2時間走らせ、根拠も何も無く「ここの防波堤なんか釣れそうだね」
 そんな感じで場所を選び、二人はゴカイをエサにジェット天秤を40メートルほど投げました。
 もちろん穂先など見ません。釣りそっちのけで雑談しながら
 たまにリールを巻いて魚が釣れてるかどうか確認するだけです。

    



 いくらか時間が経ったとき「ガタガタ」という音が聞こえました。
 振り向くと波よけに立てかけておいた私の竿が横に倒れ、
 そして防波堤の先っぽから海に落ちてしまいました。

 私たちはギャーギャー騒ぎつつも何もすることが出来ず、
 浮いたまま沖へ沖へと遠ざかっていく竿を眺めていたのですが
 ふと友人の竿を見ると友人が仕掛けを投げている方向は今私の竿が流されている
 方向と同じだということに気付きました。
 (その釣り場は本州と島を結ぶ橋のすぐそばで潮の流れがとても速く、
 別々の方向へ投げていた私たちの仕掛けは同じポイントへ流されていたのです)

 私は一瞬の間に一休さんのようにひらめきました。
 
「ひょっとしたら…」

 友人の仕掛けが私の竿かリールにうまい具合に引っかかってくれないかという
 都合のいい考えが頭をよぎったのです。友人の竿を手に取りうまく引っかかってくれることを
 願いながらリールを巻きました。
 数センチのズレも許されない状況下で奇跡的に友人の仕掛けが私のリールに絡んでくれました。

 
「やった!!」

 竿はひん曲がりリールを巻く手に力が入ります。
 仕掛けがリールから外れないように慎重に竿を引き寄せます。

 きっと私の竿の先には大物がかかっているに違いないと信じながら。
 何とか防波堤までたぐり寄せることの出来た私の竿。友人が取り込んでくれ私にバトンタッチ。
 普段見せることのないすばらしく無駄のない連係プレイです。

 よくよく見ると友人のゴカイにヒトデが釣れていて、そのヒトデが私のリールに絡んでくれていました。
 ヒトデをはずし、海水まみれのリールを巻くと確かな重量感が…!

 先ほどにも増して慎重にやり取りをします。

 私も友人もどんな大物が姿を現すのか興奮しっぱなしです。
 そして竿が海に落ちてから数分後、ついに魚が姿を現しました。

 友人「サメだ!!」
 私「いや、サメじゃなさそうだぞ」

 初めて目にする魚。マゴチでした。

 しかし釣り知識ゼロでカレイとヒラメの区別も付かないスットコドッコイな私たち二人は
 何の魚か分かりません。

 近くに小さな魚屋さんがあったので魚を持っていき聞いて、
 そこで初めてマゴチという魚の名を知るのでした。
 メジャーで測ると63センチありました。



 家に帰り父親に見せるとこれだけ大きいのだから刺身で食べようということになり
 父親が魚をさばくとかって出ました。

 しかし大きな魚体の割にはあまり身が取れなかったのを今でもはっきりと覚えています。
 父親も初めて手にする魚でうまくさばけなかったのでしょう。

 釣りの事など何も知らない私でしたが 友人の竿で私の竿を釣り、
 釣り上げた私の竿でマゴチを釣るという一生忘れることの出来ない
 ドラマティック釣りとなりました。

 マゴチ















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